「漫画村」大盛況の裏で「YouBook」など2つの違法サイトが閉鎖


海賊版の漫画を無断で掲載する大手サイト「漫画村」は、依然として非常に多くのアクセス数を獲得しています。
このブログでは、2回にわたり漫画村についての調査を行い(記事一覧)、運営者と思われる人物を突き止めることに成功し、その結果も公表しましたが、現在もなおサイトの勢いは衰える様子を見せません。

一方で、漫画村のような漫画の海賊版サイトは、今では日本人の犯罪集団のあいだではトレンドのようで、いくつものグループあるいは個人がサイトを立ち上げ、広告収益などでマネタイズを行っています。

そのうちの一つである大手サイト「YouBook」が今月、サイトを閉鎖することを発表しました。

漫画海賊サイト大手「YouBook」が閉鎖 「月額2000円で読み放題」うたう – ねとらぼ
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/05/news109.html

YouBookのサービス終了の告知

要約すると、どうやら儲からなかったようです。YouBookについての詳しい説明は後述するとして、ちなみに、この告知文で言及されている「こちらのサービス」のリンク先はおもしろいことに漫画村でした。これに深い意味はないでしょう。

YouBookから漫画村へのリンク

また3月には「DIGITAL MARKET」という別のサイトの閉鎖が発表されました。このサイトは漫画の海賊サイトなどではありませんでしたが、なぜこれを取り上げるのかについてはまた後述します。

この記事では、今まで語られてこなかったYouBookやDIGITAL MARKETの手口などについて、私が独自に調べた情報を掲載します。

YouBook (youbook.to)は2017年7月下旬ごろに現れた「ユーザー同士でオリジナルの漫画や小説などの作品を投稿して交流するSNS」がうたい文句のサイトでした。
しかし、実際には無断でアップロードされた商業作品などのコンテンツがほとんどで、これらはユーザーによるアップロードを装って掲載されていました。
また、基本的に閲覧は無料の漫画村などのサイトとは違い、YouBookには有料プランが存在し、料金は月額980円(当初は2000円)で、無料ユーザーは一部の漫画しか読むことができませんでした。

YouBookのトップページ
YouBookのトップページ。見た目では、正規サイトと見分けがつかない。

YouBookが開設された時期は、同年5月に閉鎖された「フリーブックス」のすぐ後だったことや、その他に以下の理由から、私は後継として同じグループが新たに開設したサイトだと考えました。

  • 防弾ホスティングサービス・匿名ドメインレジストラの利用
  • Cloudflareの利用
  • 最近の傾向としてドメインに .to (トンガ王国のドメイン、WHOISで公開される情報が少ない)を用いている
  • 全体的なサイトの作り(URIのパターン、フレームワーク、デザイン)が酷似している

防弾ホスティングサービスについては、オランダの「Novogara(元Ecatel)」という悪名高いプロバイダを利用していました。これはCloudflareで秘匿されていたYouBookのバックエンドのサーバーのIPアドレス 80.82.65.204 からわかったことですが、サイトが閉鎖された今、もはやこの情報に価値はありません。

彼らがウェブサイトを開設する際のパターンとして、法的リスクの回避目的に海外のホスティングサービスやドメインレジストラの利用、CDN・サーバーのIPアドレスの秘匿としてCloudflareを使うことはもはや基本となっています。
これらのサイトのつながりについて確定的な情報が出ないことも、彼らはサイトを開設するたびにメールアドレス(最近ではProtonMailがよく使われている)やサーバーを新たに用意し、それぞれのオペレーションを完全に分離しているためです。

YouBookの集客手口

YouBook自体についてはここまでとして、次に、YouBookがユーザーを集めるために行っていた手口について明らかにしたいと思います。
その手口とは、いくつにも開設した傘下の無料の漫画海賊サイトや、自身と関係の近い海賊サイトに広告を掲載させるというものです。

系列サイトへの広告

実際にこのキャンペーンが行われるようになったのは昨年10月ごろで、YouBookと関係の近い別の大手アダルトサイト「ダウンロードブックス(dlbooks.to、元ドロップブックス)」に同系列の別アダルトアニメ動画サイト「アニメリークス (animeleax.com)」へのポップアップ広告を表示させ、さらにアニメリークスからディスプレイ広告とポップアップ広告によって、サイトに誘導するということが行われていました。

ダウンロードブックスからアニメリークスに転送するための広告
アニメリークスに表示されたYouBookの広告
アニメリークスに表示されたYouBookの広告(中央)

わざわざダウンロードブックスからアニメリークスに転送させて広告を表示する理由については不明ですが、アクセス数の多いダウンロードブックスに直接広告を掲載すると騒がれる可能性があると考えたのかもしれません。

ところで、画像からダウンロードブックスからアニメリークスへの転送には「Google URL Shortener」が使われていることが確認できます。このサービスを利用して短縮したURLには統計ページが作成され、これは誰でも確認することができます。

URL: https://goo.gl/#analytics/goo.gl/uFVvn9/all_time

短縮URLの統計ページ
短縮URLの統計ページ

これを見ると、わずか1ヶ月のあいだに1300万回もダウンロードブックスからアニメリークスへの転送があり、アニメリークスからYouBookへ転送する別の短縮URLの統計ページ[1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8]では合計100万回近くの誘導があることがわかります。

1月18日以降、アニメリークスは同系列のサイト「SHARE MOVIE (smv.to)」にリダイレクトされるようになっています。なお、アニメリークスのバックエンドのサーバーのIPアドレスは 78.142.19.158 (WebCare360) でした。

傘下の無料サイトへの広告

YouBookは関係の近い他の海賊サイトへの広告以外にも、海賊版の漫画が読めるサイトをいくつも開設し、系列サイトと同様に、ディスプレイ広告やポップアップ広告によって誘導を行っています。

以下のサイトがこれらのキャンペーンに関連しています。いずれも去年から今年にかけて開設されたサイトです。

  • freshmanga.se (FRESH MANGA)
  • mangamura.se (漫画村Z)
  • mangatown.se (無料ネタバレ漫画スポイラー)
  • mechacomi.se (ガールズ漫画)
  • newmanga.se (新作漫画館)
  • mangaall.se
  • hentai.is (HentaiDL)
  • mangamura.to
  • mangamura.club
  • netabare.ch
  • onepi.to
  • magazinez.se
「FRESH MANGA」へのYouBookの広告
「FRESH MANGA」へのYouBookの広告(昨年12月14日時点)
「無料ネタバレ漫画スポイラー」へのYouBookの広告
「無料ネタバレ漫画スポイラー」へのYouBookの広告(今年1月10日時点)

ポップアップ広告によって表示されるリンクについては、以下のようなランディングページが表示されます。

YouBookのランディングページ
YouBookのランディングページ(画像を一部加工しています)

これら傘下の無料サイトについては、一見すると単なるアフィリエイト目的の広告のようにも考えられます。実際に、YouBookのホームページにもアフィリエイトの申し込みページは存在しています。また、単にYouBookへのリンクを掲載しているだけであれば疑わしいですが、サイトそれぞれに識別子(freshmanga.se の場合 via=freshmanga とある)が割り当てられています。
しかし、私が実際に試したところでは、割り当てられるアフィリエイトの識別子は強制的に適当な文字列が割り当てられ、上記のような自由なIDを選ぶことはできませんでした。
このことから、傘下の無料サイトからのアフィリエイトという形を装って集客が行われていた、あるいは特別な関係にあったと考えられます。

YouBookがサービスを終了して以降、これらのサイトのうち一部は別の系列サイトにリダイレクトされ、それ以外のサイトは広告を掲載しながら運営は継続されています。

DIGITAL MARKET

前半だけでも長くなってしまいましたが、もう一つのサイト「DIGITAL MARKET (dmm.to)」について書き残しておきたいと思います。

DIGITAL MARKETは、ユーザー同士でデジタルコンテンツの売買を行えるサイトで、その支払いにはクレジットカード決済が使えました。サイトの仕組み自体に問題はなさそうに見えますが、このサイトに出品されているコンテンツは、そのほとんどが児童ポルノであふれかえっていました。

「DIGITAL MARKET」のサイト
「DIGITAL MARKET」のサイト。コンテンツはほとんどが児童ポルノ

DIGITAL MARKETについて書く理由は、このサイトがYouBookやその他の系列サイトと関連している可能性があることや、集客方法がYouBookと同様に、系列サイトから広告による誘導がされていたことからです。

WHOISによると、このドメインは2017年11月20日に登録されており、わずか3〜4ヶ月でサービスが終了したことがわかります。

DIGITAL MARKETが閉鎖する数日前の3月13日、サイトのページ最下部で以下のような告知がなされていました。

DIGITAL MARKETからの告知
DIGITAL MARKETからの告知(画像は一部加工しています)

告知文にもあるように、クレジットカードの決済代行会社から決済を停止されたとのことで、第三者の通報によるものか、あるいは捜査機関の要請かは不明ですが、完全に機能停止に陥ったようです。また、その後に「児童ポルノに該当する可能性のあるコンテンツは出品できません」と方針を一転しました。ということは、これまでは出品していてもよかったのでしょうか。

また、代替の決済手段としてBitcoinを含めた暗号通貨の採用を検討していたようです。どこまでも諦める気はないという意思がうかがえます。

児童ポルノコンテンツの出品について、彼ら自身が自作自演でアップロードを行っていたという証拠はありませんが、これまでの彼らの手口ではユーザーによるアップロードを装ってサイト内のコンテンツを増やしていたこと(関連記事)を考慮すると、自分らで児童ポルノコンテンツの調達を行っていたとしても不思議ではありません。

サイトのサーバーやドメインについては、構成はほとんどYouBookと同じですが、サーバーは少なくとも2つあり、うち1つは 149.202.75.72 で、もう1つが 54.36.63.21 です。どちらもフランスのOVH社の所有するIPアドレスで、彼らがよく使う業者の一つです。

DIGITAL MARKETの集客手口

DIGITAL MARKETもYouBookと同様の手法で集客を行っていました。基本的には系列のアダルト動画サイトに動画のリストに紛れ込ませたリンクを挿入し、DIGITAL MARKETの商品ページに誘導をさせる形になっており、このキャンペーンに関連していたドメインは少なくとも4つを確認しています。

  • smv.to (SHARE MOVIE)
  • youflix.is (YouFlix)
  • javtb.se (JavTube)
  • toukoucity.to (アダルト動画投稿シティ)

広告スクリプトのURL(アーカイブ):

  • smv.to
    https://web.archive.org/web/20180304165339/http://smv.to/js/digi/list.js?14
    https://web.archive.org/web/20180304165341/http://smv.to/js/digi/data.json
  • youflix.is
    https://web.archive.org/web/20180219124723js_/http://youflix.is/js/pc/afdigi.js?02

上記のサイトすべてが、ドロップブックスなどの系列サイトと関連があり、DIGITAL MARKETもYouBookと同様に、彼らの新規プロジェクトの一部であったと考えられます。

おわりに

DIGITAL MARKETが潰れ、YouBookも潰れで、次に彼らが出してくるサイトは一体何なのでしょうか。あまり楽しみではありません。

最近は大変ですが、何とか生き残れるようにします。それでは。

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